
学校へのICT導入が進み、先生や子どもが一人一台の端末を使うことも当たり前になってきました。
学校現場では、ICTによって便利になった一方で、新しく増えた仕事もあります。
僕自身、教員時代からiPadなどを活用し、ICTの便利さを実感してきました。だからこそ、ICTを導入するだけでは、先生の仕事は減らないと感じています。
この記事では、ICTによって学校が便利になったにもかかわらず、先生の仕事が減らない理由を、学校現場での実体験をもとに考えていきます。

ICTの導入だけでは学校現場は変わらない😭
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教員の勤務時間は本当に減っているのか
文部科学省が実施した令和4年度の「教員勤務実態調査」によると、平成28年度の調査と比べて、教員の在校等時間は減少しています。
平日の教諭の在校等時間を比べると、
- 小学校:11時間15分から10時間45分
- 中学校:11時間32分から11時間1分
小学校、中学校ともに、1日当たり約30分短くなりました。
数字だけを見れば、教員の働き方改革は少しずつ進んでいるように感じますよね。
しかし、本当にそれは「仕事そのものを減らした結果」といえるのか、僕は疑問を感じています。
僕が教員として働いていた頃も、教育委員会や管理職は、先生を早く帰らせるための取り組みを行っていました。
例えば、定時退勤日やノー残業デーを設定したり、管理職が職員室を回って退勤を促したりする取り組みです。
しかし、抱えている仕事を減らしていないのに、「今日は定時退勤日なので帰りましょう」と言われても、先生たちは家に持ち帰って仕事をするだけです。
教員の勤務時間を本当に減らすためには、「何時に帰るか」だけでなく、「どの仕事をなくすのか」まで考えなくてはいけないのに、それができていない。
ICTを導入しても先生の仕事が減らない5つの理由

GIGAスクール構想によって、学校のICT環境は大きく変わってきています。
アンケートの自動集計、クラウド上での資料共有、欠席連絡のデジタル化など、以前より効率化された仕事はたくさんあります。
しかし、学校が便利になったことと、先生の仕事が減ることは別の話です。
ここからは、ICTを導入しても先生の仕事が減らない5つの理由を、学校現場での実体験を交えながら紹介します。
タブレットを管理する仕事が増えた
タブレットは、子どもたちに配れば終わりではありません。
- 端末の初期設定
- アカウントの作成や管理
- アプリの設定
- 年度更新
- 故障や不具合への対応
- 修理業者との連絡
- 予備端末の貸し出し
- デジタル教科書の設定
端末を使い続けるためには、さまざまな管理業務が必要です。
学校には端末を遠隔で管理する業者が入っているのですが、どこまで対応してもらえるかは、自治体によって異なるのが実情です。
授業中にタブレットが動かなくなれば、最初に対応するのは、多くの場合、その場にいる先生です。直らなければ端末を預かり、状況を確認して、必要に応じて修理を依頼しなければなりません。
さらに、学校には「ICT担当」という大きな校務分掌も加わりました。
端末やアカウントの管理だけでなく、デジタル教科書、授業支援アプリ、校内研修など、その仕事は非常に幅広くなっています。
学校の教員数が増えないまま新しい担当が加われば、一人ひとりが抱える仕事は増えてしまいます。
タブレットに関する生徒指導が増えた
子どもが自由に使える端末があれば、学習以外に使おうとするケースも出てきます。
例えば、次のようなトラブルです。
- 授業中にゲームをする
- 学習と関係のないサイトや動画を見る
- 友達のアカウントへ勝手にログインする
- 友達のパスコードを変更する
- 人のタブレットを持ち帰る
- 端末を投げたり落としたりして壊す
- カメラを使って無断で撮影する
- 写真や動画を友達同士で共有する
問題が起きれば、先生が子どもから事情を聞き、関係を整理し、保護者へ連絡します。管理職への報告や、端末の履歴確認、教育委員会や業者との連絡が必要になる場合もあります。
タブレットがなかった時代には存在しなかった生徒指導です。
ICTによって学習の可能性が広がった一方で、特に担任の先生が対応しなければならないトラブルも増えています。
紙とデジタルの二重運用が続いている

デジタルで資料を共有したにもかかわらず、
- 見られない人がいるかもしれない
- 念のため紙でも配付しておこう
- 管理職には印刷して提出しよう
となれば、データを作成して共有する作業に加えて、印刷や配付も必要になります。
これでは仕事を置き換えたのではなく、これまでの仕事にデジタルの作業を追加しただけです。
僕が二重運用の負担を特に感じたのが、コロナ禍のオンライン授業でした。
教室にいる子どもたちへ普段どおり授業をしながら、登校できない子どもへ同時に授業を配信します。いわゆるハイブリッド授業をするように指示されたのです。
先生は教室の子どもたちを見ながら、画面の向こうの子どもの様子や接続状態にも気を配らなければなりません。
黒板が画面に映っているか、声が聞こえているか、通信が切れていないかなど、通常の授業にはなかった確認も必要です。
コロナ禍では必要な対応だったと思います。しかし、その後も学級閉鎖などが起こると、「タブレットがあるのだから、オンライン授業もできるでしょう」と求められることがありました。
ICTによって、それまでできなかったことができるようになりました。しかし、できるようになったことが、そのまま先生の新しい仕事として追加されてしまうのです。
ICT活用が先生個人の力に任されている
同じ学校の中でも、ICTの使い方は学年や先生によって異なります。
ある学年ではGoogleフォームでアンケートを実施している一方で、別の学年では紙のアンケートを使っている。このようなことも、決して珍しくありません。
コロナ禍では、十分な準備期間がないまま、学校へ一気にタブレットが導入されました。
端末は届いたものの、ルールや使い方の周知が追いついていない学校もありました。
その結果、ICTに詳しい先生が自分で調べ、周りの先生へ使い方を教える形になります。
詳しい先生には、質問や設定作業が集中します。自分の仕事をICTで効率化できたとしても、その先生に新しいサポート業務が集まれば、負担が減ったとはいえません。
空いた時間が新しい仕事で埋められる
ICTに限った話ではありませんが、僕はこれが最も大きな問題だと感じています。
例えば、これまで1時間かかっていたアンケートの集計が、Googleフォームを使って30分で終わるようになったとします。本来なら、30分の仕事が減ったことになります。
しかし、学校ではこの空いた時間で新しい仕事が追加されることがあります。
写真や動画を簡単に共有できるようになれば、「学校での様子をもっと保護者へ発信しよう」という話にもなります。
もちろん、資料を分かりやすくしたり、子どもの様子を保護者へ伝えたりすることには価値があります。
しかし、できることをすべてやろうとすれば、仕事は際限なく増えていきます。
ICTで便利になったから、これもできる。AIを使って早く作れるから、さらに質の高いものを作れる。この仕事がなくなったから、あの仕事を追加しよう。
このように、効率化によって生まれた時間が、仕事を減らすためではなく、仕事の量や質をさらに上げるために使われてしまいます。
ICTを働き方改革につなげるために必要なこと

新しい仕事を始めるなら古い仕事をやめる
デジタルで資料を配付するなら、紙での配付をいつまでにやめるのか。
欠席連絡をアプリで受け付けるなら、電話での連絡をどこまで減らすのか。
アンケートをフォームで実施するなら、印刷や手作業での集計をやめられないか。
このように、新しい仕組みを導入するときには、それまで続けてきた仕事も一緒に見直す必要があります。
学校では、「今までやってきたから」「念のため」という理由で、古い仕事が残りやすい傾向があります。しかし、新しい仕事を一つ始めるなら、古い仕事を一つやめる。
それくらい明確な考え方がなければ、仕事は増え続けてしまいます。
端末管理を先生だけに任せない
タブレットの管理や故障対応、アカウント設定などを、先生だけで抱える仕組みも見直す必要があります。
端末管理のうち、どこまでを学校が担当し、どこからを業者や専門スタッフへ任せるのかを明確にすることが大切です。
ICTに詳しい先生がいるからといって、その先生へすべての質問や設定作業を集めてしまえば、個人の負担が大きくなります。異動によって担当者がいなくなれば、学校全体のICT活用が止まってしまう可能性もあります。
特定の先生の知識や善意に頼るのではなく、誰でも確認できるマニュアルを整え、困ったときに相談できる専門スタッフを配置する必要があります。
ICTで生まれた時間の使い方を見直す
ICTで仕事が早く終わったとき、その時間を新しい書類や資料を作る時間で埋めてはいけません。
効率化によって生まれた時間は、
- 子どもの話を聞く
- 授業について考える
- 困っている子へ声をかける
- 先生同士で情報を共有する
- 先生自身が休憩する
- 少しでも早く退勤する
といったことに使ってほしいと思います。
ICTは、本来、先生が子どもと向き合う時間や、授業を考える時間を生み出すためのものです。
「早くできるようになったのだから、もっとできる」と考えてしまえば、ICTは仕事を減らす道具ではなく、先生へさらに多くの仕事を求める道具になってしまいます。
まとめ
ICTの導入によって、学校は以前より確実に便利になりました。
一方で、紙とデジタルの二重運用、端末管理、タブレットに関する生徒指導など、これまでにはなかった仕事も増えています。
また、ICTによって生まれた時間が新しい仕事で埋められてしまえば、先生の負担はいつまでも減りません。
ICTを働き方改革につなげるために必要なのは、「何ができるようになるか」だけでなく、「代わりに何をやめるのか」を決めることです。
そして、ICTによって生まれた時間は、新しい書類を作るためではなく、子どもと向き合ったり、授業について考えたり、先生自身が休んだりするために使ってほしいと思います。
投稿者プロフィール

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教育×ICTクリエイター|教育メディア運営
教員15年→2026/3退職 中学数学13年+小6算数専科2年
Apple Teacher・Kahoot!認定クリエイター
書籍「算数から数学への壁」(エール出版社)
授業で使える算数・数学問題、思考力を育てるクイズ、ICT活用法を発信。
これまでに5種類の兼業を経験し、ストック型副業で月10万円の収益を構築。
電子書籍「論理的思考問題50」はAmazonベストセラー第7位を獲得。
現在は教育コンテンツ制作、デジタル教材開発、教員の働き方や副業について発信中。
SNS総フォロワー数は約3万人。
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