発達障害という言葉が広く知られるようになり、自分の子どもが発達障害に当てはまるのではないかと感じて、学校に相談し、医療機関や相談機関を訪れるケースが非常に増えています。
ここでいう「グレーゾーン」とは、発達障害の特性はあるが、診断基準を満たさない人のことを指します。発達障害は医療機関で検査しても、明確な基準がないのではっきりと見極めることが難しい人がとても多いです。
この記事では、子どもの行動などに発達障害ではないかと疑問を持ち、心配している保護者の方、発達障害の特性を持つ子どもにどのようにサポートするべきなのか、について書いていきたいと思います。
この記事はこんな人におすすめ
・発達障害について知りたい
・発達障害未満(グレーゾーン)について知りたい
・グレーゾーンの子どもにどのようにサポートすれば良いか分からない
目次
発達障害とは
発達障害とは、生まれつきの脳機能の発達の偏りによる障害のことです。身体、学習、言語、行動において不全を抱えた状態であり、原因は先天的なものがほとんどで、それに伴う能力の欠落は障害にわたって治ることはないと言われています。
発達障害は外見から分かることはほとんどなく、そのような特性を持った子どもを「わがまま」「怠けている」などと思ってしまう保護者の方はとても多いです。
得意、不得意がはっきりとしているその特性ゆえの困難さは、学校生活などの集団生活に困難が発生します。その子の特性などを理解した上で、学校や親が協力してサポートしていくことが大切です。
発達障害を抱える人たちの数
未成年で発達障害と診断された人の数は約22,500人、二十歳以降に発達障害と診断された人の数は約243,000人(2016年調査)で、女性よりも男性が2倍以上と、男性に多い傾向がみられます。また、発達障害まではいかないグレーゾーンの人の数は、これの約10倍いると言われています。
子どもの発達障害は、2006年の時に約7,000人だった数が2019年には70,000を超え10倍となっています。(専門機関や診断をする人が増えたことも要因ではある)
発達障害の種類と特徴
自閉症スペクトラム障害(ASD)
・社会的コミュニケーションや対人関係の困難さ
・限定された行動、興味、反復行動
・感覚の過敏性、鈍感性
注意欠陥・多動性障害(ADHD)
・集中力がない
・じっとしてられない
・思いつくと行動してしまいます。
学習障害(LD)
・聞く、話す、読む、書く、計算する能力に困難が生じる
グレーゾーンの子どもの特徴
保育園、幼稚園児の例
・食事途中でも手を止めて気になるものの方へ動き回る
・こだわりが強く一度始めると止められない
・友達とうまく遊べない
・状況を読むことができない
小学生の例
・学校のルールが守れない
・授業中に立ち歩いてしまう
・忘れ物が多い
・一人で話し続ける
・計算や書くことが極端にできない
・友達に攻撃的
中学生の例
・何でも思ったことを口に出してしまう
・友達とのトラブルが多い
・空気が読めない
・すぐに物を失くす
・興味のあることにしか集中できない
・数学が極端にできない
グレーゾーンの子どもを放置する危険性
発達障害の特性を持っていることを心配して医療機関を訪れたものの、特性はあるが発達障害とは言い切れない「グレーゾーン」だと診断され、「しばらく様子を見る」ということになった子どもがいました。
小学校低学年のときは勉強にもなんとかついていくことができていましたが、学年が上がるたびに、環境の変化に対応できずに体調を崩したり、学校の先生や友達との些細な出来事から学校を休みがちになったりしました。
小学校の高学年になった時に、学校から普通級ではなく、支援級を勧められたが、発達障害ではなく「グレーゾーン」であることを理由に断ってしまいました。
小学校6年生になるころには勉強には全くついていけず、学校にもほとんど行けなくなった頃に再度、医療機関を受診しました。診断では、算数などの計算能力は平均を上回るものの、その他の能力はどれも平均を大きく下回っていました。また、学校生活などの日々の生活にかなりの困難を抱えているのは疑いようもなく、この数年間で自閉症スペクトラムの傾向がかなり強まってしまい、グレーゾーンを通り越して障害ゾーンになってしまいました。
「様子を見る」ことが悪化につながる
確かなことは、グレーゾーンと診断された場合、「発達障害ではないから安心して良い」ということではありません。むしろこれからの学校や保護者のサポートによって大きな違いが生まれるということです。
医療機関が言う「様子を見ましょう」を安心材料として受け取ってしまうと、その子どもの未来を悪い方へ変えてしまいかねません。グレーゾーンに当てはまる人の数は非常に多いので、医療機関は積極的には対応してくれません。しかし、子どもが抱える軽度な課題を、できるだけ早くから大人が把握し、療育やトレーニングを行うことがその後の改善に大きくつながります。
「グレーゾーン」は決して様子を見ればいい状態ではなく、適切なサポートが必要な状態であると認識しましょう。
グレーゾーンの子どもに対するサポート
特性を理解する
まずはグレーゾーンの子どもの特性を理解することが一番重要です。今現在それほど生活に困り感がなくても、何のサポートもせずに数年間放置してすると、いくつかの問題が重なり、大きな生活の支障や生きづらさにつながり、それが将来的に深刻な問題になってしまう可能性があります。
共感性、社会性、コミュニケーション、学習など能力がどの程度あって、どの程度苦手なのか、その子のベースにある特性を理解することが、まず求められます。
幼稚園や学校と連携する
保護者が1人で抱える問題ではないということを知っておいてください。必要であれば学校でどのような様子なのか、また、保護者と先生がどのように協力して、どのようなサポートをしてあげられるかを相談してください。勉強についていけているか、忘れ物や失くし物が多くないか、友達とうまく遊べているかなどの様子を聞き、家でも学校でも必要なサポートができるように連携をしましょう。
特別支援教育コーディネーターの先生に相談
学校では、発達障害に困っている保護者向けに「特別支援教育コーディネーター」による相談も受け付けています。通常クラスでの授業が難しいと判断した場合に学校内の関係者、福祉、医療機関どの連絡調整を行ってくれます。発達障害が疑われる子どもの相談役を担っていますので、一度相談してみましょう。
コーディネーターが設置されていない学校もあるので、まずはコーディネーターが学校にいるかどうか確認をしてみましょう。
その子に合った学級を選ぶ
基本的には学校には「特別支援学級」があります。特別支援学級とは、障害(グレーゾーンを含む)のある子ども一人ひとりに適切なサポートができるように少人数制で運営されている学級のことです。その子どもの特性やニーズに合わせた指導を実施しているため、効果的な学習支援・生活支援を受けることができます。
学校の先生から見ると特別な支援が必要だと判断し、保護者に特別支援学級を勧めることがありますが、イメージが良くないからなのか、頑なに拒否をする保護者の方も見受けられます。
児童相談所などに相談してみる
児童相談所とは児童福祉法に基づき設置されている行政機関で、18歳未満の子どもに関するあらゆる相談を無料で対応してくれます。児童心理士などの専門スタッフが在籍していますので、子どもが発達障害ではないと診断されても、どのようにサポートすれば良いか一度相談してみましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。学校現場で多くの子どもを見てきましたが、発達障害(軽度なものも含む)を抱えていない子どもは殆どいないと言ってもいいくらい誰もが何かしらの特性を持っていると思わされます。その多くは年齢を重ねるごとに改善していく傾向にありますが、サポートが必要な子どもに必要なサポートがされずに、大きくなって悪化してしまうということもあるようです。
子どもの特性を理解して、適切なサポートをすることでその子の未来は明るくなるでしょう。
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現役で数学を教えている中学校の先生です。中学の数学のプリントやICT関連の情報、ブログでは道徳や学級レクのネタも発信しています。
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