ほとんどの人が1度は経験したことがある部活動。学生時代の多くの時間を部活動に費やしてきたという人、また、部活のために学校に行っていたという人も少なくないでしょう。

 学生時代、部活動は経験していても、「部活動の顧問」を経験している人は少ないはずです。当然先生になった人や、なったことがある人しか部活動顧問の経験はないでしょう。

 この記事では、約15年間中学校で運動部の顧問をしてきた私が、ほとんどの人が知らない部活動の裏側について書いていきたいと思います。

数学の先生

実際に僕の経験からブラック部活動を解説します。

 部活動という労働問題

 そもそも部活動は学校の先生の業務には含まれていません。当然部活動をやることによる給料は発生しません。給料は出ないのですが、平日は時間外に1時間以上やると300円~500円、休日は4時間以上やると2500円~3000円ほどの特殊勤務手当というものがでます。(自治体によって多少違う)

 これを聞くと、「4時間やって3000円もらえるなら良いじゃん」という人がいますが、出勤時間、引率、準備、片付け等すべて含めると4時間で終わることはほとんどないです。また、5時間やっても10時間やっても同じ3000円です。一か月のトータルの時給に換算すると300円~500円でしょう。

 後で書きますが、部活動中に起きた問題(ケガや人間関係のトラブル)はすべて部活動の顧問の先生に責任があるため、割に合わないと思う人がほとんどだと思います。

 「なら、やらなければいいでしょ?」と言う人がいますが、当然拒否権はあると思います。かたくなにやらないという人もいると思いますが、(職場では会ったことない)学校によっては全員顧問制という決まりを作ったり、校長先生が直接呼んで圧力をかけたりと、拒否しにくい、させないような仕組みが作られています。

数学の先生

部活動顧問を断るのはかなり難しい!

 「子供のため」という魔法の言葉

 学校の先生は気の良い人が多いので、「子供のために」と言われてしまったら、やりたくなくても引き受けてしまう人が多いです。子供の成長のために学校の先生になったのだから、「子供のために」と言われて断ったら、自分は子供のためには働かないと言っているようなものなので、断ることは難しいです。

 部活動の顧問を引き受けても、自分の好きな部活動を選べるわけでありません。学校の暗黙の了解のようになっていますが、その部活動を長くやってきた人、学生時代その競技にどれくらい長けていたかなど、顧問になるには優先順位があります。例えば、「サッカー経験者だから、どうせ顧問をやるならサッカー部がいいな」と思っても、その学校に20年サッカー部を見てきたベテランの先生、学生時代全国大会に出場したことがある若い先生がいたら、あなたがサッカー部の顧問になることはまず不可能です。

 当然ルールも知らない、やったことがない競技の運動部の顧問や、楽器なんか吹いたことがなくても吹奏楽部の顧問の先生になる可能性があります。

 「やったことがなくても、練習でケガをしないように見ていれば良いんでしょ?」いやいや、そんなに甘くはないです。練習試合では審判をすることを要求されますし、その競技に関して素人でも審判資格など取るようにプレッシャーをかけられることもあります。当然ミスジャッジなどすると、生徒、保護者から文句を言われます。

 このような現状があるので、部活動の顧問をやることで苦しんでいる学校の先生は多く、働き方改革では改善すべき最優先事項となっている労働問題なのです。

数学の先生

部活動が原因で辞めてしまう先生も珍しくないです。

 練習に顔を出すことは全体の仕事の1/10

 あなたが学生の時の部活動の顧問の先生を思い出してみてください。おそらく最初に浮かんでくるイメージは練習を教えている姿や監督としてチームに指示をしている姿だと思います。だから、顧問の先生の仕事は「その競技を教えること」と思っている人が多いと思いますが、競技を教えるという仕事は全体の1/10ほどだと私は感じています。

 自分のチームのマネジメントだけでも、予定表作り、生徒の指導、保護者対応、他校との連絡、チーム登録等の事務作業、グラウンド(体育館)調整等があります。

 さらに知っている人は少なくなりますが、その競技の顧問を長くやっていると、地区大会の役員や、県大会の役員になることがあり、この役員になってしまうとはるかに仕事が増します。

数学の先生

競技を教えたくて先生になった人も、これにビックリする人は多い!

 自腹を切って部活動をする先生

 自分のチームが大会に出るかどうかに関わらず、県の端から端まで移動させられ、大会の企画、運営、審判などしなければなりません。当然手当は0円です。大げさではなく0円です。なぜならば、自分の生徒を引率しているわけではないからです。部活動の手当は自分の学校の生徒が活動して初めてもらえる手当なので、自分の学校の生徒が出ていない大会では手当はつきません。

 私の経験ですが、5日間片道50㎞先の会場に行き、朝7時~夕方16時まで大会の運営の仕事をしました。その日のうちの1日は台風で帰れなくなってしまったので、ビジネスホテルに泊まりました。それにかかったお金は、往復の高速代で約10000円、駐車場代で約4000円、宿泊費が7000円と食費がかかりましたが、手当は交通費で2000円ほどです。

 また、競技によっては選手登録料、チーム登録料、監督登録料、審判資格更新、など基本選手登録料は生徒から部費として集めまたりしますが、部活動を運営するにあたって雑費はいろいろとかかってきます。

 私の同僚が部活の合宿で、貸し切り大型バスの代金と宿泊費、約50万円を立て替えたという話を聞いたことがあります。立て替えただけなので、お金は戻ってきたそうですが、当然自分の宿泊費等は自腹を切ることになりますし、50万円もの大金を立て替えなければいけないシステムがそもそも大問題です。

数学の先生

僕も今までいくら自腹を切ったことか…

 保護者からの期待や苦情

 部活動の競技を選ぶことができないのと同様に、学校の先生は異動も選ぶことはできません。今いる学校の部活動でうまくやれていたとしても、異動した先でもうまくできるという保証はありません。

 例えば、吹奏楽経験の先生が、最初の学校で吹奏楽部をもっていて、異動した先で人がいないからといってバスケットボール部の顧問をするというような話はよくあることです。さらにそのバスケットボール部が強豪チームだったらどうなるか。

 強いチームの生徒は勝ちたい、保護者はそれに期待する。頼りになる顧問の先生が異動してしまい、素人の先生が顧問になった。生徒は負けた理由を顧問の先生のせいにし、保護者はもっとしっかりやれと苦情を言ってくる。そのような新しい環境で潰れてしまう先生も多くいます。

 私も、一人顧問をしていた時に、やりたくもない大会役員に夏休み中ほとんど駆り出された時期があって、自分のチームの出ない県大会やもっと上の大会の仕事をしていたら、自分のチームの保護者から「OFFが多すぎませんか?」と言われたことがありました。

 余談になりますが、学校の先生がよく着ているポロシャツがあるのをご存じでしょうか。あのポロシャツは一枚3000円で毎年4月がつ頃に職員室で体育の先生にポロシャツを買うようお願いされます。もちろん断ることは可能ですが、若い先生は何も知らずに買ってしまうでしょう。そのお金は県大会やもっと上の大会の運営費として使われます。学校の先生からお金を取って、ボランティアで大会運営をしてもらうことで、そのような大会は運営されています。

数学の先生

前任の先生がバリバリやっていた部活の後任になると本当にたいへん!

まとめ

 自分が学生の時は楽しい部活動を経験し、大人になったら教える側になりたいと希望を持って教員になる人も、このような現実があるとはつゆ知らず、精神を病んで休職、退職してしまうケースが後をたちません。

 私も学生時代、部活動を経験しているので、部活動のすべてを否定したいわけではありません。当たり前のように日本の文化になっている無料でその競技を教えてもらうことができる部活動の裏で、苦しんでいる人がいることも事実です。

 部活動問題は学校から切り離す、部活動を労働として対価を支払うなど、早急に改善しなければいけない労働問題だと思っています。

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