このドラマは、1986年の厳しい体育教師が令和の2024年にタイムスリップしていしまうという独特の設定で始まる、時代を超えたヒューマンコメディとして展開されるドラマです。

 昭和と令和という異なる時代の人々が直面する価値観の違いや、主人公の体育教師、小川四朗の現代では「不適切」とされる行動や言動がコミカルに描かれています。

 そんな昭和の体育教師が不適切な言動から考える、現代の教育現場で「不適切」とされるものを事例も含めて紹介していきたいと思います。

数学の先生

昔と今の学校の違いが分かる内容になっているよ!

「男のクセに」や「女らしく」

 ドラマの中でも主人公の小川四朗が「男のクセに~だな!」と言っていましたね。もちろん現在の学校ではOUTな発言です。男のクセに、女らしく~という言葉は、「ジェンダーハラスメント」と呼ばれる、性別に関する嫌がらせに該当します。

  • 男のクセに根性がない
  • 女性にだけお茶くみをさせる
  • 男のクセに泣くな
  • 女の子なのにはしたない

 などの発言がジェンダーハラスメントに該当します。

 教育現場ではこれらのような表現はしてはいけないと研修などでも口を酸っぱくして言われます。

 校舎内で喫煙

 主人公の小川四朗は教室で煙草を吸っていましたね!さすがにあれには僕も驚きましたw

 学校の敷地内での喫煙が禁止のなったのは平成22年のことです。「学校等における受動喫煙防止対策及び喫煙防止教育の推進について」が発出され、子どもが利用する学校や医療機関は、屋外であっても子どもたちへの受動喫煙の被害を防止する観点から禁煙となりました。

 私の感覚では、そもそも煙草を吸う先生自体、かなり減ってきている印象ですが、煙草を吸っている先生は、あの手、この手で煙草を吸っているという印象です。

  • タバコ部屋なるものを作って吸っている
  • 自分の車の中で隠れて吸う
  • ベランダで吸う
  • グラウンドの死角で吸う

 屋外で「特定屋外喫煙場所」設置すれば喫煙は可能ですが、実際にこれらは全て罰則に該当します。しかし、学校の敷地外で吸っていたとしても、地域住人に見られれば、あっという間に教育委員会などに通報されてしまいますので、喫煙者にとっては厳しい時代なのかもしれませんね。

 連絡先の交換

 一昔前は部活動の連絡などで、個人の電話番号を伝えておくこともありましたし、連絡網には自宅の電話番号すら載せていた時代もありました。

 現在では、教員の不詳事が相次いだ結果、2021年に文科省は児童生徒とSNS等で私的なやり取りを禁止する通知を出しています。また、連絡網自体もほとんどの学校で廃止されています。

 LINEなどのSNSで連絡を取り始めた結果、好意を募らせわいせつ事案が起きることを防止するという目的があります。

「~くん」「~ちゃん」はNG

 現在の学校では児童生徒に対して、「さん付け」で呼ぶことを奨励しています。男の子は「くん」、女の子は「さん」と男女で区別する事はおかしいという風潮が高まったためです。

 また、今どきの小学校では同級生や友人の名前を呼び捨てにしたり、あだ名で呼ぶことを禁止し、誰に対しても「~さん」と呼ぶように指導している学校が増えてきています。これは面白おかしく「あだ名」をつけて、そこからいじめに発展することを懸念しての対策です。

 全員を「さん付け」で児童生徒を呼ぶことを推奨する学校は増えつつありますが、先生たちは中には戸惑っている先生が大勢いることも事実です。

 体罰

 30年ほど前は、当たり前のように児童生徒に体罰をして指導していていました。現在70歳くらいの元教員は、初任者時代に先輩から、「なんで殴らない?殴らないと生徒に舐められるよ?」と教わっていたそうです。驚きですよね。

 当然、今では体罰をすれば懲戒免職(クビ)になりますし、教育的にも人権的にも配慮の欠けた行為です。体罰による指導で、正常な倫理観を養うことはできませんし、児童生徒が力による解決の志向を助長させ、いじめや暴力行為などの土壌を生む恐れがあります。

 現代の先生たちは、体罰はもちろん、身体的接触に関しても、避けるべきものだと研修で教わります。特に男性の先生が女子児童生徒への身体的接触はかなり厳しくなっています。また、密室で2人きりになることも避けるよう教わります。

 怒鳴る

 昔の学校は体罰が当たり前だったので、怒鳴ることは日常茶飯事だったといいます。もちろん、現在でも怒鳴る先生はたくさんいますが、教師として「怒鳴るは三流」なんていう言葉もあるように、多くの先生が敬遠する行為ではあります。

 確かに、普通に言い聞かせても言う事を聞かない子どもは珍しくないので、教育現場では「仕方のない行為」というのが多くの先生達の認識です。

 しかし、現在では「指導死」なんていう言葉も広く知られるようになりました。「指導死」とは、教員の不適切な指導がきっかけとなった子どもの自殺を、遺族や研究者が「指導死」と呼び始めたのです。(実際にはどのような言葉を言ったのかは分からないが)

 この不適切な指導の中に「怒鳴る」という行為も含まれているので、「怒鳴る」という行為さえ、先生たちは気を付ける対象となっています。

 家族の話

 家族の話を安易にすることも、現在では気を付けなければいけません。

 例えば、生徒の前で「〇〇さんのお母さんは先生だよね」などは個人情報の観点から言ってはいけませんし、「みんなのお父さんお母さんは~」等の言葉は、両親が死別や離婚している子どもにとっては不適切とされてしまいます。また、「〇〇さんのお兄さんは勉強ができて~」等の言葉も、後々「比較されて嫌だった」と言われかねません。

 どんな言葉が子どもを傷つけてしまうか分からない所が、現在と昔の学校現場の違う点でもあります。

 この高校なら受かるよ

 現代の先生は、断定的な言葉を使うことも気を付けなければいけません。

 例えば、中学校の進路指導などでは、「〇〇さんは〇〇高校であれば合格しますよ」や「〇〇高校であれば安全圏ですね」などの言葉は管理職からは言わないようにと指導をされます。

 これは、生徒が不合格だった場合、「先生は合格するって言いましたよね?」などの、保護者からのクレームを避けるためです。

 ホモ

 昔は先生が当然のように、「男同士でくっつくな!お前らホモか!」などの言葉を使っていましたが、現代では「ホモ」は差別用語なので、絶対に使ってはいけない言葉です。

 実際にこんなことがありました。ある授業中の男の子が男性の先生の会話です。

生徒「先生は結婚しないんですか?」

先生「まだしないよ」

生徒「先生はホモなんですか~?w」

先生「そんなわけないだろ~w」

 このやり取りの何が悪いか分かりますか?実際に「ホモ」という言葉を使ったのは生徒なのですが、それに対して、まるで「同性愛者」がいけないことのように「そんなわけないだろ」と言ったことです。

 この会話で、傷ついたという生徒が、後々他の先生に申し出てきたという事が実際にありました。

 実際に「不適切」とされた事例

 ここからは実際に「不適切」(子どもの心を傷つけた)とされて、先生が管理職や教育委員会から注意を受けた事例を紹介します。

 「なにをやっているんだ」

 小学三年生の児童Aが授業中に悪口を言われたが、担任のB先生はそれに気づきませんでした。Aは次の休み時間に、悪口の仕返しに暴力を振るいました。その様子を見た別のC先生が、「なにをやっているんだ!」と大きな声で注しました。

 Aは納得できずに机を叩き始めました。C先生はAの行動を制止するためにから身体を押さえました。Aは大きな声を出されたり、身体を押さえられた結果、C先生を怖がるようになりました。

 「なんで分からないの?」

 小学五年生の担任D先生は授業中、答えを間違えた児童Eに対して「なんで分からないの?」と言ったり、行事の練習中、児童Eがふざけて、他の児童と動きが合わないことに対して、「もう練習に参加しなくていい」と怒鳴ったりしたため、児童Eは心を深く傷つけられた。

 「あなたのわがままではないのか?」

 授業中、教員Fの説明に対して、「聞こえません。」と発言した小学六年生の児童Gに対して、教員Fは放課後に呼び出して、「他の生徒は何も言っていない。お前のわがままではないのか。」と指導した。児童Gは本当に聞こえなかったの悔しくて泣きだした。

 その後、教員Fは児童Gを更にに指導を続け、児童Gは号泣して帰宅した。

 「やる気あるのか」

 中学教員Hは運動会の練習中に、ダンスの振り付けがなかなか覚えられなかった生徒Iに対して、他の生徒の前で「なぜ覚えられないのか。」と指導した。自分の意見をうまく伝えられない生徒Iはその場で泣き出し練習を続けることができなくなった。

 練習後、教員Hは生徒Iを呼び出し、「やる気あるのか、このままだと運動会に出さないぞ」と怒鳴り振り付けの練習をさせた。深く傷ついた生徒Iは運動会の練習に参加できなくなった。

 まとめ

 いかがだってでしょうか。ドラマ「不適切にもほどがある」から考える現代の「不適切」。昔は当たり前のように行われていたことも、現在では絶対にやってはいけないこになっていることが数多くあります。

 中には「昔の方が良かった」ことも数多くあるでしょう。このドラマを通して、現在の学校の指導の難しさを、皆さんに知っていただければと思ってこの記事を書きました。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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管理者
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現役で数学を教えている中学校の先生です。中学の数学のプリントやICT関連の情報、ブログでは道徳や学級レクのネタも発信しています。
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