挨拶をしても、会話をしても、特に困っているようには思えない。普通の子どもに見えるのに、普通ができない。普通でも知的障害でもない、IQ70以上80未満の子どもを「境界知能」と言ったりもします。これは「軽度知的障害」の子どもにも当てはまる場合があります。一見すると普通の子どもに見えて、見過ごされてしまうケースがとても多いです。
この記事を読めば、境界認知や軽度知的障害の子どもを取り巻く親や、先生などの大人が、理解しておかなければいけないことや支援の方法が分かります!
知的障害の基準
厚生労働省は知的障害について「知的機能の障害が発達期(18歳まで)にあらわれ、日常生活に支障が生じているため、何らかの特別の援助を必要とする状態にあるもの」と定義しています。
知的障害の基準は3つです。
- 知的機能に障害があること(IQ70未満が認定基準のひとつ)
- その障害が発達期(18歳まで)に発症していること
- 日常生活に支障が生じていること(学校に行けない、対人関係がうまくいかない)
仮にIQ65でも、特に日常生活に支障が生じていなければ知的障害と認定されません。日常生活を送るうえでの生きづらさが生じて初めて診断がつくものです。
「境界認知」と「軽度知的障害」
一般に「境界認知」はIQ70~84の状態を指し、「知的障害グレーゾーン」とも呼ばれます。統計学上、人口の約14%、1700万人がこの境界認知に当てはまります。「軽度知的障害」は知的発達が実年齢よりも低いIQ50~69の水準にとどまっている状態を指します。
どちらも幼児期には気付かれにくく、身の回りのことはほとんど自分で行うことができます。
授業についていけない「しんどさ」
学校は子どもが勉強だけでなく、友達付き合いや集団生活でのふるまい方など、社会に出るにあたって大切なものをたくさん学ぶ場です。しかし、やはり学校にいる時間の大半は授業を受けている時間なので、授業が分からない、ついていけない、先生の言っていることが分からない、という状態が長時間続いているとしたら、子どもはかなり苦しんでいるはずです。
小学校低学年までは勉強が苦手でも、本人も親もそれほど気にしないと思いますが、学年が進むにつれて周りに比べて勉強ができないことに気付き、次第に元気がなくなってしまうという子や、中学のテストでほとんど0点に近い実力にも関わらず、友達との間では多少できるように見せかけ苦しんでいる子どもも少なくありません。
知的障害の子どもを伸ばす
子どもの認知機能面の苦手な個所を理解し、その分野のトレーニングをしていくことが大切です。一般的には「IQは一生変わらない」と言われていますが、やり方次第で、認知機能の一部が明らかに伸びる子どもがいることも事実です。
一度「軽度知的障害」や「境界認知」と診断された子どもが、数年たって平均的なIQになった例は実際にありますし、脳は外界からの刺激などによって常に機能的な変化を起こしていると言われています。脳の神経組織や回路は変化する性質があるので、成長期の子どもの脳ならなおさら、常に変化して能力を伸ばすことができる可能性があります。
境界認知の子どもへの支援
「軽度知的障害」や「境界認知」の子どもは、物事を記憶して置ける量が少ない場合があります。複数のことを伝えられると、一部しか記憶できなかったり、すぐに忘れてしまったりするといったことがあります。口頭で伝えても覚えることが難しいので、絵や写真など、視覚にうったえる形で伝えることがポイントです。また、一度で覚えられなくても、繰り返し記憶することで定着することもあるので、絵や写真などと併用して覚えることを支援すると良いでしょう。
また、手順を一つひとつスモールステップに分けて説明する事も大切です。計算問題などに取り組む際には、すべての式を一度に見せるのではなく、計算する順番に式を見せて解いていくと理解しやすい場合があります。
親や学校の先生が1人で悩むことが一番よくありません。授業の遅れや日常生活、学校生活に支障が生じている場合には、親や先生が協力することが必要です。また、学校にはスクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラーといった相談役がいるので、相談をしながら子どもが学びやすい環境を整えてあげましょう。
ゴールは「自立」
親は通常級の方が良いのか、支援級の方が良いのか迷うこともあると思います。結論から言うと、どちらが良いかは「ケースバイケース」です。どちらを選ぶにしろ、子どもの成長のゴールは「自立」することだと思います。
子どもが何かに挑戦し、失敗を繰り返しながら試行錯誤を繰り返す。一人でできない時は周りの大人たちがサポートをしてあげるような環境を整えることで、子どもは少しずつ自立していきます。
子もがやることを先回りして、「もっとこうした方が良いよ」と口出ししたり、子どもが転ばないように障害物を取り除いたりといったやり方は「自立」を促すものではありません。先回りして手助けした方が手っ取り早いかもしれませんが、それは子どもの成長の妨げになってしまう場合もあります。くっつきすぎず、離れすぎない距離感を保ちながら「いつも見ているよ」「いつでも手伝うよ」というスタンスでいることが、子どもが一番安心できる環境です。
子どもが何の不安もなく新しいことへチャレンジし、自分でできることを少しずつ増やしながら、「自立」というゴールに向かって進むことを我々大人は支援していくことが大切でしょう。
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